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浦和地方裁判所 平成4年(わ)689号 判決

主文

被告人朝川商事株式会社を罰金一八〇〇万円に、被告人鳳商事株式会社を罰金八〇〇万円に、被告人許清二を懲役一年六月にそれぞれ処する。

被告人許清二に対し、この裁判の確定した日から四年間、右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一  被告人朝川商事株式会社は、昭和四六年一一月、埼玉県熊谷市宮前町二丁目二五九番地に本店を置き、営業目的を遊技場、飲食店、ホテルの経営並びに不動産の貸付等として資本金二〇〇万円で設立され、昭和六三年八月、本店を同市桜木町一丁目四〇番地に移し、平成元年一二月、資本金を八〇〇万円に増やし、パチンコ店四店舗のほか焼肉店、賃貸マンションなどを経営していた会社であり、被告人許清二は、同被告人会社の設立当初から代表取締役として、業務の全般を統轄していた者であるが、被告人許は、同被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により、所得を秘匿したうえ、

一  昭和六三年九月三〇日、同市仲町四一番地所在の熊谷税務署において、署長に対し、右被告人会社の昭和六二年八月一日から昭和六三年七月三一日までの事業年度の法人税の確定申告を行うにあたり、実際の所得が二億六六九七万三九二七円で、これに対する税額が一億四〇九万二二〇〇円であったのに、これを偽り、その所得が一億七五八八万七六六円で、これに対する税額が六五八五万二二〇〇円である旨の申告書を提出してその納付期限を過ごし、よつて、その不正行為により、同被告人会社の右事業年度における右正規のものと申告によるものとの差額の三八二四万円の法人税を免れ、

二  平成元年一〇月二日、右税務署において、署長に対し、右被告人会社の昭和六三年八月一日から平成元年七月三一日までの事業年度の法人税の確定申告を行うにあたり、実際の所得が一億九九一九万四九六二円で、これに対する税額が七七一九万一八〇〇円であつたのに、これを偽り、その所得が一億一四二七万六一一六円で、これに対する税額が四一五五万四九〇〇円である旨の申告書を提出してその納付期限を過ごし、よつて、その不正行為により、同被告人会社の右事業年度における右正規のものと申告によるものとの差額の三五六三万六九〇〇円の法人税を免れ、

第二  被告人鳳商事株式会社は、昭和五三年一月、同市星川二丁目七五番地に本店を置き、遊技場、飲食店の経営並びに不動産の貸付等を営業目的として設立され、昭和六三年八月、本店を同市桜木町一丁目四〇番地に移し、平成二年三月、資本金を一二〇〇万円に増やし、パチンコ店のほか、ゴルフの練習場や賃貸マンションなどを経営していた会社であり、被告人許は、昭和五六年から同被告会社の代表取締役として、業務の全般を統轄していた者であるが、被告人許は、同被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により、所得を秘匿したうえ、

一  昭和六三年一二月二八日、前記熊谷税務署において、署長に対し、右被告人会社の昭和六二年一一月一日から昭和六三年一〇月三一日までの事業年度の法人税の確定申告を行うにあたり、実際の所得が一億三七八八万八二四六円で、これに対する税額が五二一〇万八四〇〇円であつたのにこれを偽り、その所得が一億三八八万五三円で、これに対する税額が三七八五万九二〇〇円である旨の申告書を提出してその納付期限を過ごし、よつて、その不正行為により、右正規のものとの差額の一四二四万九二〇〇円の法人税を免れ、

二  平成二年一月四日、前記熊谷税務署において、署長に対し、昭和六三年一一月一日から平成元年一〇月三一日までの事業年度の法人税の確定申告を行うにあたり、実際の所得が一億三四〇八万二三〇六円で、これに対する税額が五〇七三万八八〇〇円であつたのに、これを偽り、その所得が九一八〇万二九円で、これに対する税額が三三〇二万三二〇〇円である旨の申告書を提出してその納付期限を過ごし、よつて、その不正行為により、同被告人会社の右事業年度における右正規のものとの差額の一七七一万五六〇〇円の法人税を免れた。

(証拠の標目)

注 証拠の末尾の括弧内の算用数字は、公判調書の検察官証拠等関係カード甲に記載の請求番号を示す。

判示全部の事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官及び大蔵事務官(平成三年九月一〇日付、一一日付、一二日付、二五日付、一〇月四日付((二通))、平成四年一月二四付、二七日付、二八日付、三〇日付((二通))、三一日付((二通))、二月一三日付、一四日付(本文一一丁のもの)一九日付)に対する各供述調書

一  髙橋二三子(平成三年九月一〇日付)、秋山光男、後藤清(二通)、木村裕昭及び田部井功の大蔵事務官に対する各供述調書

判示第一の事実につき

一  被告人の大蔵事務官に対する平成三年九月一八日付、一九日付、一一月七日付、平成四年一月一四日付、二一日付(二通)、二九日付、二月四日付、一二日付、一四日付(本文九丁のもの)に対する各供述調書

一  金守福の検察官及び大蔵事務官(一二通)に対する各供述調書

一  髙橋二三子(平成四年一月三一日付)、金明植及び安田明の大蔵事務官に対する各供述調書

一  熊谷税務署長作成の回答書(1)

一  検察官作成の捜査報告書二通(2、3)

一  大蔵事務官作成の査察官報告書(4)

一  大蔵事務官作成の査察官作成書類一綴(9)

一  大蔵事務官作成の調査書二九通(10ないし38)

一  登記官作成の登記簿謄本(朝川商事株式会社についてのもの)

判示第二の事実につき

一  被告人の大蔵事務官に対する平成四年一月一四日付供述調書

一  張英夫の検察官及び大蔵事務官(四通)に対する各供述調書

一  熊谷税務署長作成の回答書(5)

一  検察官作成の捜査報告書二通(6、7)

一  大蔵事務官作成の査察官報告書(8)

一  大蔵事務官作成の調査書三通(52ないし54)

一  大蔵事務官作成の検査てん末書三通(55ないし57)

一  登記官作成の登記簿謄本(鳳商事株式会社についてのもの)

(法令の適用)

被告人許の判示各行為は各被告人会社の各事業年度毎に法人税法一五九条一項に、各被告人会社については、更に同法一六四条一項にそれぞれ該当するところ、各被告人会社については、情状に鑑み、同法一五九条二項を適用し、被告人許については、その罪の所定刑中、懲役刑を選択し、各被告人について、右各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、各被告人会社については、同法四八条二項により、右各脱税額を合算し、その金額の範囲内で、被告人許については、同法四七条本文、一〇条により、犯情の最も重い第一の一の罪の右所定刑に法定の加重をした刑期の範囲内でそれぞれ処断し、被告人朝川商事株式会社を罰金一、八〇〇万円に、被告人鳳株式会社を罰金八〇〇万円に、被告人許を懲役一年六月にそれぞれ処し、被告人許に対しては、同法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から四年間、その刑の執行を猶予することとする。

(量刑の事情)

各被告人会社の経営の実態は、いずれも被告人許個人のものとみられるべきものであるところ、本件犯行は、被告人許が自らの事業を法人として営むことにより、税法上その他の社会的利便を受けながら、物欲に駆られ、更に、その法人税の負担までも免れてまで蓄財を図つたものであり、その動機に酌量すべきものがないこと、その態様は、予め従業員に指示し、営業店舗を従業員に賃貸しているように偽装して売上の全部を隠したり、売上の一部を除外して経理担当者に渡して過少の報告をさせ、なお、右偽装賃貸店舗の売上も同様にして一部を除外し、これらの除外金を仮名預金口座に入金させて秘匿したうえでその犯行に及んだものであり、これを計画的に遂げたこと、犯行が二年度に及んでおり、その脱税額が多額に達し、ほ脱率がいずれも高いものであること、これにより多額の蓄財をなしたことなどを併せ考えると、本件各犯行は、反社会性の強いものとして悪質で、被告人らの罪責は重いというほかない。

他方、本件各犯行については、被告人許が、事業拡大を企て、そのために、金融機関からの融資を必要としていたが、担保とすべき不動産が足りなかつたり、日本国籍を有しないことから、信用を得るために、多額の預金を作ることのほかに方法がなく、功を焦る余りこれに及んだ様子が窺われること、それでも、同被告人は、平成元年九月に父親を亡くすと、心境の変化を生じ、自ら犯行をやめるべく決意し、前記の従業員らに指示して違法な操作をやめさせるに至つたこと、なお、前記のような仮名預金を許していた関係金融機関にも責められるべきものがあること、本件各犯行の態様が比較的単純で、発覚し易いものであつたと思われること、被告人許は、本件各犯行が発覚した後は、前記の不法蓄財の預金を各被告人会社に戻し、同各社について修正申告を行つたこと、同各社は、これにより、多額の重加算、延滞税を課せられ、すでにこれを納付したこと、被告人許は、これまで、前科や特に問題視されることもなく過ごしているうえ、母国や日本国の各種の公的団体に多額の寄付をするなど、少なからず貢献し、多くの表彰も受けてきたこと、本件審理を受け、改めて自らが犯した罪の重さを知り、反省を深めた様子も窺われ、本判決後、各被告人会社の代表者を退く旨述べていること、その他、被告人許の年齢の程など斟酌すべき点も存する。

これらの事情を総合考慮した。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 岩垂正起)

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